「品質」を次のレベルへ ―ニーリーが挑んだ5時間の品質ワークショップ―

こんにちは、QAチームの宮原です。
少しずつ肌寒くなってきて、もうすっかり秋ですね。 この季節は美術館や博物館に行きたくなるので、ちょくちょくホームページで企画展をチェックしています! おすすめの美術展などがあればぜひ教えてください!

先日、Findyさんのイベント #QATT番外編 秋の夜長に品質ゆるトーク交流会 にて、「品質ワークショップをやってみた」というテーマで同じQAチームの関井がLT登壇させていただきました。
今回は、そこでお話した品質ワークショップについて、より詳細なレポートをお届けしたいと思います。

当日の発表資料はこちらです。
speakerdeck.com
10月上旬、ニーリーのプロダクト統括本部で「品質ワークショップ」をオフラインで開催し、開発・QA・PdMなど職種を超えた約30名のメンバーが参加しました。

組織が成長を続ける上で、「品質」という根本的なテーマにあらためて向き合うことは、非常に重要なプロセスだと考えています。 今回のオフラインでの品質ワークショップは、私たちQAチームが目指す「品質」のスタンダードを組織全体で共有し、次のレベルへと引き上げるための第一歩です。

この取り組みは、先日同じQAチームの池端が書いたテックブログ
「ドメインを解き、事業を動かす。ニーリーQAの野望」 でも語られていた、私たちQAチームの課題「品質の定義がチーム内で揃っていない」に対する、具体的なアクションの一つでもあります。
nealle-dev.hatenablog.com
すでにワークショップ以前から組織内では「仕様通りにつくる」だけでは不十分であるという認識はされていました。
私たちが目指すのは、その意識を組織全体のスタンダードへと引き上げ、今までの「仕様通りにつくる」から更に目線を上げる組織への変革です。
ここからは、ニーリーらしい熱い議論が交わされ、「品質」について本気で考えた約5時間の内容を余すところなくお伝えします!


なぜ今「品質ワークショップ」を開催することになったのか?

Park Directはユーザー数の増加に伴い、社会の「インフラ」としての期待がかかり始めています。 しかし、私たちQAチームは、その品質にはまだまだ改善の余地があると感じていました。 プロダクトの成長と共に開発組織も70名規模に拡大し、機能が多様化・複雑化する中で、新たな課題も顕在化しています。

特に、社会の「インフラ」として基準を意識し、私たち自身がこれまで以上に高いサービスレベルを求めるようになった結果、これまでのバグレベル定義上ではインシデントではないとされていた事象も、インシデントとして扱う判断をとるようになりました。 「以前のスタンダード」のままでは期待に応え続けることが難しい。

この現状に強い危機感を抱き、組織が大きくなった今こそ、全員の品質に対する「目線」を合わせる必要があると考えました。

品質の「目線」を合わせる理由

もちろん、開発メンバーは皆、品質に対して高い意識を持っています。 しかし、多様なメンバーが増える中で、それぞれが持つ「品質」の捉え方や基準には、わずかな「ズレ」が生まれていると感じていました。

今回の目的は、その「ズレ」を解消し、「全員で品質を作り上げる」という共通認識を築くことです。 品質はQAチームだけが作るものではなく、企画から開発、テストまで全員が当事者として取り組む文化を根付かせたい。これが企画した最大の理由です。

そのベースとして、まず私たちQA自身が「仕様通りであること」の確認から脱却し、「ユーザーにとって本当に価値があるか」という「本質的な品質」を組織の共通言語にしたいと考えました。

オンラインではなく、オフラインを選んだ理由

ニーリーはフルリモート勤務メインのメンバーが多いため、当初はオンライン開催も検討しました。しかし、「目線を揃える」という難しいテーマには、オンラインだけでは不十分だと判断しました。

メンバーの暗黙的な「品質観」や本音を深く掘り下げ、本気で議論を交わしたい。そして、異なる職種や普段関わりの少ないメンバーと直接交流し、当事者意識と一体感を醸成したい。 特に、QAチームからの問題提起として、私たちの熱意を直接伝える必要もありました。

オンラインでは得られない、対面の議論だからこそ生まれる熱量や気づき、そして一体感こそが、最高のプロダクトを作り続ける原動力になると考え、オフライン開催を決断しました。

プログラム:2つのパートで「品質」を深掘り

今回のワークショップは、品質に対する意識を高めるために2つのパートに分けました。

  1. ”品質”の基準を上のレベルで揃える
     1.1 みんなが考える品質の相互理解
     1.2 品質を考えるための知識インプット
     1.3. 品質の基準を上げる

  2. 品質とアジリティの両立をし続ける上での、我々の現在地を知る
     2.1 品質についての振り返り

1. ”品質”の基準を上のレベルで揃える

1.1 みんなが考える品質の相互理解

私たちが日常のサービスに良し悪しを感じるのは、一人ひとりが無意識に持っている「判断基準」が違うからです。
このパートでは、その「基準」が一体何なのかについて考えてみました。
まずは、「Park Direct」を触らずに、「Park Direct」のGoodポイントとBadポイントを付箋に書いてもらいました!
普段からプロダクト開発に関わっているメンバーですが、何も見ずに書くとなると少し難易度が高いかもしれないと思っていました。。。

ですが、我々の心配をよそに参加メンバーはGoodポイント、Badポイント含めて、決めていた時間内では足りないかな?と思うほど書いていて、プロダクトへの関心の高さを知ることが出来ました!
次に、「Park Direct」を触りながらペルソナ別の視点でGoodポイント、Badポイントをグループワークで考えてもらいました!

Park Directは下記3つのペルソナで構成されています。

  • 不動産管理会社さま
  • 駐車場の借主さま
  • ニーリー社員

goodbad

私もワークショップに参加していたのですが、空車問い合わせ〜申込、契約後までのシナリオを共有しながら、途中途中での気付きを議論する形となりました。その中でも特に、駐車場の借主さまの立場から申込や契約のフォーム、マイページの導線についての意見が多かったように思います。

他のグループの付箋も参考にしてもらいたかったので、グループごとに移動して他グループの付箋も見てもらうことにしました。そこでも、自分のグループでは出なかった意見などについて、各グループで議論が行われていました!

あらためて「不動産管理会社さま」「駐車場の借主さま」「ニーリー社員」の立場からPark Directを見た時に、いつも業務で触れている機能でも普段と違う見え方や捉え方が出来たのではないかと書かれた付箋を読んで思いました。

また、同じ機能でも人によって感じ方が違うことに気づき、Good ポイントとBadポイントとなる「基準の違い」を改めて見つめ直す良い機会になったと思います。

1.2. 品質を考えるための知識インプット

「1.1. みんなが考える品質の相互理解」の議論内容を「1.3. 品質の基準を上げる」で更に深く議論していくにあたり、議論のヒントとなりうる品質の視点や、代表的な品質モデルを参加メンバーに共有しました。
紹介したのは3つ。

これら3つのモデルを共有したのには、理由があります。
まず「品質はプロダクトだけでなく、プロセスや組織にも宿るものであり、全員ごとである」という広い視野(スコープ)を共有したかった。
そして、その土台の上で、議論のゴールを単なる「仕様通り(当たり前品質)」ではなく、「ユーザーを感動させる品質(魅力的品質)の追求」も意識した議論にしたい。
さらに、「性能」や「使用性」といった具体的な議論の切り口(ヒント)を共有することで、議論が多角的な視点になり「感動させる品質」を考えるヒントとしてもらおうと考えました。

1.3. 品質の基準を上げる

品質について学んだ知識を使いながら、「1.1. みんなが考える品質の相互理解」で出た意見をさらに掘り下げていき、「ユーザーを感動させる品質」を表すキーフレーズを考えました。
このパートでは、各グループに1つのペルソナ(不動産管理会社さま/駐車場の借主さま/ニーリー社員)を割り当て、より深くペルソナの立場から考えてもらうことにしました。

「1.1. みんなが考える品質の相互理解」よりもさらに白熱した議論が各グループで交わされ、多くのキーフレーズが生まれていました。各グループで出たキーフレーズは、ギャラリーウォーク形式で各グループのメンバーにも共有し、良いと思ったキーフレーズには各自投票してもらうことにしました。

キーフレーズ

選ばれたキーフレーズは、いずれもシンプルながら、ユーザーの課題を本質的に捉えた鋭いものばかりでした。
今後、Park Directの品質レベルを高めるのに大切なキーフレーズだと思います!


2. 品質とアジリティの両立をし続ける上での、我々の現在地を知る

2.1. 品質についての振り返り

第2パートでは、日々の業務で感じる品質に関する課題や、今後やってみたいことをKPT+α(Keep, Problem, Try, α)の形式で振り返ってもらいました。
※「+α」には品質への思いなどを書きました。

振り返り

参加メンバーはワークショップの第1部、第2部を経て生まれた品質への考えや、以前から考えていることなど、普段はなかなか聞く機会のない「品質への思い」や「もっとこうしていきたい!」といった考えを書いていました。
グループの代表者に発表もしてもらい、品質に対するメンバーの意識が再確認出来るパートとなりました。

当日の様子

当日の様子1

当日の様子2

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品質ワークショップ参加メンバーにアンケートに答えてもらいましたので一部ですがご紹介します!

Q.今回のワークショップで得た、最も大きな「学び」や「気づき」は何でしたか?

アンケートを読むと、その多くがワークショップによって品質に関して深く考えてもらうきっかけになったのだと確信を持てる内容でした。プログラムの構成検討や準備などの苦労もありましたが、企画して良かった!と私たちQAチームも嬉しく思いました!

品質ワークショップを終えて

運営側として率直に「品質ワークショップを開催して良かった!」と感じています。
『「品質」に対する目線を揃えておきたい』というテーマのもと、普段は関わる機会の少ないメンバー同士が直接顔を合わせ、真剣に議論する姿は、想像以上の熱量でした。

一人ひとりが持つ「品質の基準」や、プロダクトに対する思いを直接共有できたことは、オンラインでは決して得られない価値だったと思います。
先日も開発メンバーとテストについて打ち合わせしていて、ワークショップで出た品質の考え方を基にテスト内容を考えている場面があり、意識が浸透していっているのだという手応えも感じています。

全員の意見が完璧に一致したわけではありません。
しかし、参加者それぞれが持つ「基準のズレ」を認識し、新たな品質のモノサシを手に入れたことは大きな一歩です。このワークショップをきっかけに、チームの品質に対する意識がさらに一段引き上げられたと確信しています。

今回見つかった課題や、導き出されたキーフレーズを、今後のプロダクト開発にどう活かしていくか。それが、組織としての次のミッションです。このワークショップをゴールではなく、最高のプロダクトを作り続けるための「スタート地点」として、これからも一丸となって取り組んでいきます。