
はじめに
お疲れ様です!株式会社ニーリーSREの大木 ( @2357gi )です!寒くなってきましたね、スノーボードの季節です。嬉しいですね、気持ちテンション高めでやっていきます。
「#ニーリー開発組織の野望」第7弾の今回は、ニーリーの今後のプロダクト展開のためにSREチームが仕掛けようとしている取り組みを紹介し、SREが「マルチプロダクトの”起爆剤"」であり、「事業成長へのレバレッジポイント」たるぞという話ができたらなと思います。若干ビッグマウスですが、私は本気でSREが今後ニーリーの成長角度を左右すると思っています!
ワンプロダクトのSREからマルチプロダクトのSREへ
我々のメインプロダクトである Park Direct(パークダイレクト) はこれまで T2D3 を超えるスピードで成長してきました。3年連続で月極駐車場オンライン契約サービスの「導入社数」「オンライン契約可能台数」の項目においてNo.1*1を獲得しています。
初期はオフショアで開発していたのですが、早々に自社開発へ切り替え、早いフェーズで SREチームも組成され、インフラのモダナイズやオブザーバビリティの充実化に取り組んできました。SLI/SLOもまだビジネス指標と連動できていないなど課題はありますが、一定の信頼性はモニタリングできる状態になっています。また、ニーリーのSREのミッションは「信頼性とアジリティの両立」なので、アジリティを向上させる取り組みとして、多くのリリースエンジニアリング施策やfeature環境の提供などを行ってきました。このフェーズのプロダクトのSREとしては、かなりやれている方だと自負しています。
しかし、CTO三宅のnoteにもあるように、ニーリーはこれからマルチプロダクトに注力していくので、SREとしても方針を変えていく必要があります。
私は「そのプロダクトでしか体験できない圧倒的な価値」というのはプロダクトそのものの価値に加えて「複数プロダクトがシームレスに連携することで生まれる価値」で構成されると思っています。Park DirectやPark Direct for Business、そしてそれらによって蓄積されていく駐車場やユーザーのデータから次々と生まれるプロダクトが今後連携することで、そのプロダクトでしか体験できない圧倒的な価値」を生み出していきます。
例えばPark Directで月極駐車場を借りているユーザーが旅行をするとき、旅行先のニーリー提携の駐車場を予約しておけば、そこで料金を支払わなくても自動で決済される。途中で給油するときはガソリンスタンドでPark Directのクーポンを使い、EVの場合はPark Direct EVで検索してすぐに充電できる・・・。近い将来こういった一連の体験が実現されるでしょう。

こういう世界を実現するため、継続的に新しいプロダクトを生み出し、サービスインしてグロースする必要があります。そのために、プロダクトとしての質を0→1の時から高く保つ必要があり、Park Direct 水準のSREingを素早く展開していく必要があります。ここが、今のSREチームの注力ポイントだと踏んでいます。
プロダクトが素早くサービスインできるためのボイラープレートや、開発者が迷うことなくグロースに集中できるガードレールなど、プラットフォームとして用意すべきものはたくさんあります。そしてこういったパーツの質が今後3年後、5年後のニーリーのマルチプロダクトの景色を大きく左右すると思います。
つまり、我々SREチームがいかにいいものを作り上げるかが試されているわけで、いいものを作り上げれば、マルチプロダクトが爆発的に生まれてグロースしやすくなるわけです。冒頭で言った「マルチプロダクトの起爆剤」であり、「事業成長へのレバレッジポイント」になると考えています。タイトル回収です。
SREというプラクティスと、我々が今やらなければいけないこと
複数プロダクトが次々と立ち上がる環境では、Central SREだけでは確実にボトルネックになります。実際、直近リリースされたプロダクトは開発期間がなんと数ヶ月だったため、大慌てで様々なSREプラクティスを導入することになりました。 ボトルネックを避けるには、SREプラクティスを主導するのがSREチームではなく、「各プロダクトチームが自ら正しいSREプラクティスを実践できる状態」を作ることが重要です。 そして、私達は以下の段階を踏む事により実現しようと考えています。
第一に、Park Direct での失敗から学ぶ。
第二に、その経験を形式知に落とし込み、全チームで共有できる仕組みを作る。
そして第三に、各チームが主体的にSREプラクティスを実装できるようにイネーブリングしていく。
この3つのステップを通じる事により、効率的に複数プロダクトが立ち上がり、グロースしていく土壌を整えようとしています。
既にグロースしているプロダクトでの経験
私達の強みとして、 既に柱の事業として10→100 のフェーズにあるプロダクトや、そこに劣らぬ成長率の 1→10フェーズのプロダクトが存在するという点があります。それらを生み出す上であらかじめ実施しておいた方がよかったSREプラクティスが、SREチームとプロダクトエンジニア達で共に体感した経験値として残っています。
例えば、昔のPark Direct のエラー監視の仕組みは古典的な「エラーメッセージをSlackに飛ばして、そこを起点に対応する」という方式でした。ログレベルやエラーのフォーマットなども決まっていない状態で、当初はそれで回っていましたが、サービスがスケールするにつれて運用負荷が高まり、結果的にそこそこな移行コストをかけてDatadog ErrorTrackingを導入しました。

こういったプラクティスをサービスがスケールする前の0→1のフェーズで整えておくことにより、低い整備コストで継続的に恩恵を得ることができ、また将来のグロースの妨げとなる運用負荷の高まりを未然に防ぐことができます。また、SREプラクティスをプロダクトチームと苦労しながら導入してきたという経験と関係値も、大きな遺産です。
形式知化と展開によるスケール
前述した学びを形式知化して横展開することで、再現性とスケールの効率が良くなります。
理想はボイラープレートやテンプレートを作り、自動化を組むことで最低限の手間でスピーディーに開発へ着手できる状態ですが、今まさに新しいプロダクトが生み出され続けているので、それらを作り込むよりも、まず新しく生まれるプロダクトをどうにかする方向へ舵を切りました。
具体的には、形式知を元に Production Readiness Checklist を整備し、0→1のプロダクトに対して実践し基準を上げたり、既存システムに導入していたSREプラクティスを担うツール群などをモジュール化して再利用性を上げる取り組みを実施しています。

(この辺りは後々テックブログで紹介したいと考えているので、乞うご期待ください。)
各チームへの移譲・イネーブリング
そして、最終的には各チームが主体的にSREプラクティスを実装できる世界線を目指しています。
Enbedded SREを各プロダクトチームに配置する動きも選択肢にはありますが、0→1,1→10のフェーズでのSREプラクティスの実践を経験した開発組織や、今までのSREプラクティスの実践や草の根活動により培った信頼貯金、そしてなにより優秀なプロダクトエンジニアが揃っていることを考えると、Central SREからのイネーブリングも実現可能だと考えています。CTOを始めとした経営層がSREの重要性を理解してくれていることも追い風に、組織的なアプローチに投資していけるはずです。
すでにSREがボトルネックにならないための仕組みを実践し始めています。AI用ドキュメントの充実化によるIaCコードのAI生成精度向上や、CodeRabbitによるIaCコードのレビューなど、生成AIの力も借りてプロダクトエンジニアへインフラ構築・変更作業の移譲が進められそうです。
「SREチームがSREチームでなくなること」を目指して
Central SREからのイネーブリングにより、SREプラクティス実践の主導もプロダクトチームへ移譲していきたいと画策しています。
プロダクトチームが主体的にSREプラクティスの実践をする世界、夢が広がりますね。
どれだけマルチプロダクトが立ち上がりグロースしようとも、主体的なSREプラクティスの実践により信頼性が担保され続ける。これこそがマルチプロダクトプラットフォームの完成系だと考えます。
そして、そんな世界になったらみんなが勝手にSREプラクティスの実践をするので、SREチームは必要なくなります。
つまり、今回の連載記事の言葉を借りるなら、「SREチームがSREチームでなくなること」こそがSREチームの野望です。
ニーリーでSREとして働く楽しさ
ここまで事業と技術の面白さと展望の話をしたので、最後に人とカルチャーの話をしたいと思います。
ニーリーで働く人は一人一人が「事業のトップラインを上げる」ことを念頭において働いています。ここで一つお気に入りのエピソードを紹介したいのですが、SREが急に沖縄に、しかもエンジニアリング一切関係のない業務のため出張したことがあります。
Park Direct を導入いただく不動産管理会社様の駐車場情報などは紙で管理されていたりするので、管理会社様へ直接赴いてスキャンするといった業務が発生します。普段はサクセス部門の方が実施しているのですが、「今年の事業数値達成の為に人手足りないから、誰かヘルプで沖縄に飛んでくれない?」というヘルプ依頼が Slack に投下されます。
僕はそれを見て、明日のSREの仕事とスキャン作業どちらが事業貢献になるかを考え、沖縄に飛びました。これはまさに職種関係なく「事業のトップラインを上げる」ために仕事をしているというエピソードだと感じますし、何より日頃の月次全社会での事業数値展開やセールス&サクセスの方による「今なぜここが正念場で、ここで頑張ることが今後どう響くのか」というメッセージにより、より自分事として捉えられるのだと思います。俗っぽい言い方ではありますが、「ベンチャーっぽい」と感じています。
また、開発組織の「作りこみすぎない」というカルチャーもお気に入りです。
プロダクトエンジニアの西村さんの『70点で始める業務効率化開発』が良い例で、まずは作ってリリースし、FBループを回してみることを大切にしています。これも「完成度の高いものを時間をかけて作るよりも、70%でも出して事業に良い影響を出す」というトップラインへの意識だと解釈しています。
前述した通り、SREでも理想的なボイラープレートやテンプレートの構築ではなく、まずはProduct Readiness Checklist の策定と運用から始めています。いちエンジニアとしては完璧なものを生み出したい気持ちもありますが、それよりも現在進行形で生まれるプロダクトに対して、最短経路で良い影響を生み出すために必要なものを整理した結果ですね。
前述した「ベンチャーっぽさ」と根っこは一緒ですが、一方で今何がどこまで必要なのかを見極める冷静さがありますね。ニーリーの開発組織の魅力に「熱量と冷静さの共存」という言葉がありますが、本当に組織のカルチャーを表していると思います。
終わりに
マルチプロダクトプラットフォーム構築、SREプラクティスの文化醸成、そしてSREチームでなくなることを目指す ― これらはすべて、事業成長と企業価値向上という目標に向かっています。
今、ニーリーは面白い局面を迎えています。Park Direct や Park Direct for Business の成長を元に、マルチプロダクト戦略によって成長をより加速させていきます。
SREエンジニアとして事業成長や企業価値向上に貢献できる、やりがいのあるフェーズだと思います。SREエンジニアに限らず、なんならエンジニアに限らず絶賛メンバー募集中です。
ぜひ一緒にマルチプロダクトの未来を作りませんか?熱量と冷静さを兼ね備えたあなたのご応募、お待ちしています。
SREの求人票はこちら。
https://herp.careers/v1/nealle/nmnOesD2w1JU
カジュアル面談はこちらから。
https://nealle.notion.site/26b8c35b4dfa81218100cf3bcc224ba9
*1:※「月極駐車場のオンライン契約サービス」の「導入社数」(サービス導入をしている不動産管理会社数)と「オンライン契約可能台数」について2024年11月の㈱未来トレンド研究機構によるサービス提供事業者に対するヒアリング調査及びデスクリサーチ。